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応募は媒体の「ゴール」、採用サイトは「アシスト」だ

山根 弘行
山根 弘行
株式会社HRFreaks 代表 / Chief Consultant|人材業界20年
— この記事の要点

採用の振り返り会議で、こんな会話をよく聞きます。

「今回の採用、どの媒体が効いた?」「A媒体から3件、B媒体から1件、紹介経由で2件です」「じゃあ来期はA媒体に予算を寄せよう」。——もっともらしい。数字も出ている。誰も反対しません。

でも、私はいつもこう尋ねたくなります。「その6件の応募者は、応募ボタンを押す前に、どこを見ていましたか?」と。たいてい、会議室は少し静かになります。誰も、そこを見ていないからです。

※採用支援の現場で繰り返し立ち会ってきた会議を再構成したものです。特定の企業の事例ではありません。

サッカーで考えると、よくわかります。応募という「得点」は、媒体に計上されます。A媒体から3点、B媒体から1点。スコアシートにはそう載る。でも、得点の一歩手前には、必ず誰かの「アシスト」がある。採用において、その決定的なパスを出しているのが——採用サイトです。

得点は記録される。アシストは、記録されにくい

サッカーを少しでも見る人なら知っています。ゴールを決めたフォワードは英雄になり、翌日のニュースの見出しを飾る。一方、その得点を生んだ絶妙なスルーパスは、よほどの名アシストでない限り、記憶からこぼれていきます。得点者の名前は誰もが言えても、アシストした選手の名前はすぐに出てこない。

採用でも、まったく同じことが起きています。「A媒体から応募が来た」という得点は、はっきりと記録される。媒体の管理画面に、応募数として数字が並ぶからです。ところが、その応募者が決断する直前に会社のホームページを見て、「ここなら働いてみたい」と背中を押されていたとしても——その"アシスト"は、どこにも記録されません。

得点だけを数えると、アシストの価値は見えなくなる。
そして人は、見えないものに投資をやめる。

ここに、採用サイトが過小評価される構造があります。媒体は「3件獲得」と胸を張れる。でも採用サイトは「私が2件、背中を押しました」とは言えない。貢献はしているのに、スコアシートに載らない。だから「効果が見えない」と判断され、予算は媒体(得点者)にばかり寄っていく。アシストの軽視です。

でも、アシストなしに得点は生まれない

考えてみてください。どんなに優秀なフォワードでも、パスが来なければシュートを打てません。ボールが足元に届かなければ、得点のしようがない。媒体も同じです。媒体は求職者を「ゴール前」まで運んでくれる優秀な選手ですが、最後にシュート(応募)を打たせるには、その直前の良いパスが要る。

そして求職者は、応募という最後の一歩を踏み出す前に、ほぼ必ず会社のホームページを確認します。これはデータが裏づけています。

96.2%
就活中に採用HPを閲覧した
63.1%
最も有益な情報源は「個別企業のHP」

出典:キャリタス就活「2025年卒 採用ホームページに関する調査」(株式会社キャリタスリサーチ/大学4年生 1,030名)

ほぼ全員が、応募の手前でホームページを見ている。つまり、すべての得点の手前に、採用サイトというアシストの局面が存在するのです。媒体が運んできたボールを、応募というゴールにつなぐ。その最後のパスを、御社の採用サイトは、ちゃんと出せているでしょうか。

山根 弘行
山根の視点

「媒体を変えても応募が増えない」という相談を、本当によく受けます。フォワードを次々入れ替えているのに点が取れないチームと同じ構図です。問題は得点者ではなく、パスの出し手にあることが多い。受け皿である採用サイトが機能していないと、どんな良い媒体からボールが来ても、ゴール前で空回りするんです。媒体の乗り換えを検討する前に、一度アシストの局面を見直してみてください。

「悪いアシスト」が、得点を消している

怖いのは、採用サイトがアシストをしないだけでなく、ときにマイナスのパスを出してしまうことです。せっかく媒体がゴール前まで運んだ求職者を、採用サイトが台無しにしてしまう。たとえば——

これらは、ゴール前で味方にパスをするどころか、相手にボールを渡してしまうようなものです。前回の記事でも触れたとおり、求職者はサイトの古さだけで志望度を下げます(新卒採用調査で87.8%)。媒体費というコストをかけて運んだ大切なボールを、最後の最後で失っている。これほどもったいないことはありません。

名アシストの条件は、良い採用サイトの条件と同じ

では、良いアシストとは何か。サッカーの名手たちのパスには、共通点があります。それは、受け手が一番シュートを打ちやすい場所に、最高のタイミングで届けること。受け手の動きを読み、迷わせない。採用サイトに置き換えると、こうなります。

得点者求人媒体・スカウト・人材紹介 ── 求職者をゴール前まで運ぶ
アシスト採用サイト ── 「働きたい」を引き出し、迷わず応募へ通す

つまり、良い採用サイトとは「美しいサイト」ではなく「アシストの上手いサイト」です。受け手である求職者の気持ちを読み、応募という得点に、そっとつなぐ。私たちが採用サイトを「デザインの仕事」ではなく「採用の仕事」と考えるのは、このためです。

得点王とアシスト王、両方そろって勝てる

ここで誤解してほしくないのは、「媒体より採用サイトが大事」という話ではないことです。それは「フォワードよりミッドフィルダーが偉い」と言うようなもので、意味がありません。強いチームには、得点を取るフォワードと、それを生むアシストの名手が、両方そろっています。

採用も同じです。媒体・スカウト・紹介という得点ルートは、求職者と出会うために欠かせません。そして採用サイトという受け皿が、その出会いを応募へと結実させる。どちらかではなく、両方。媒体に予算を投じるなら、同じくらい、その受け皿にも目を向けるべきなのです。

山根 弘行
山根の視点

私がよく経営者の方にお伝えするのは、「アシスト率を上げましょう」という言い方です。同じだけ媒体にお金をかけても、受け皿である採用サイトを整えるだけで、運ばれてきたボールが得点に変わる割合が上がる。媒体費を増やすより、よほど費用対効果がいいことが多いんです。得点を増やしたいなら、得点者を増やす前に、アシストの精度を上げる。これがセオリーだと思っています。

御社のアシスト率は、いまどのくらいか

最後に、ひとつだけ問いを置いておきます。御社が直近で採用できた人に、こう聞いてみてください。「応募する前に、うちのホームページを見ましたか? そこで、どう感じましたか?」と。

もし「見たけど、正直あまり印象に残っていない」という答えが返ってきたら——それは、媒体というフォワードが、アシストの援護なしに、たまたま個人技で決めてくれた得点かもしれません。個人技に頼った得点は、続きません。仕組みで得点を生むには、アシストを設計することです。

応募という得点は、媒体に記録される。けれど、その手前で決定的な仕事をしているのは、いつも採用サイトです。スコアシートには載らない、その地味で確実な貢献を、もう一度見直してみる価値はあると思います。

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